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さてさて、次の漫才の中にはどんな洒落、言葉遊びがはいっているでしょうか。


「さあ、京名所は漫才見物と出かけましょう」
「どんなプランで見物する?」
「京都は王城の地と言うて、長い間、日本の文化の中心やった」
「昔は学問をすると言えば、京に行くに決まったものでした」
「だから、今でも、学問することを〈京行く〉と言うくらいです」
「そら教育やないか」
*     *     *
「京都で神社仏閣を見るなら、何と言っても北野の天神さんだけ忘れられん」
「そんなに有名ですか?」
「だって皆が、京都は菅公(かんこう)の街やというてる」
「そんな阿呆な。その観光は、京都には見物するところが多いという意味や」
*     *     *
「京都をすっかり見ようと思うたら、まず少なくとも一年はかかる」
「そんな大層な」
「だって、至るところに名所旧跡があり、その一つ一つに何千年の由緒と伝説
 がある。嘘やと思うたら、どこでも近くの区役所で訊いて来い」
「そんなこと、役所で分るか?」
「分かるはずで、役所の仕事は古跡(戸籍)の調査が専門や」
「君の話、嘘と本当のけじめがつかん」
「兎に角、山紫水明の地、どこを見物しても損する気遣いはない」
「さすが京洛の都、街全体に伝統がある」
「電灯で思い出したが、夜の京都は格別の趣がある」
「そんな妙な思い出し方をしないな」
「街を歩けば、方々にキャバレー、ダンスホール、社交喫茶、映画館に劇場、
 青楼に遊技場は花柳の巷ーー」
「心ブキウキ、つい、ふらふらと誘われて・・・」
「遊ぶのに面白い街で、これが本当に享楽の都や」
「そら、キョウラクが違う」
「違うはずや。〈今日楽〉でも、銭(おあし)を使い過ぎて明日は苦しい」
「そんな情けない見物は堪忍してくれ」
*     *     *
「何とまあ沢山の茶碗屋が並んでることやろう」
「そら、ここは西陣織と共に京の誇る名産、清水焼の本場やないか」
「なるほど、そうか」
「ここの地名はキヨミズと読んで、シミズとは言わん。その訳というのはー」
「何や?」
「僕は知らん」
「そんな頼りないこと」
「清水寺で知ってるのは、先ず第一に芝居で有名な清玄と桜姫」
「それなら僕も知ってる。桜姫が清春と言う美少年との不義がバレそうにな
 ると、桜姫は私の恋の相手は清玄さまと、清玄を臨時の恋人にしてしもう
 た」
「偉い徳をしたのが清玄で、これが本当の坊主丸儲けや」
「君、勝手に喋れ」
*     *     *
「高いところから見ると、京都の街は本当に縦横ともキチンとしているな」
「その上、呼び方も分かりよい。京都駅から北に向かって行く時は上がる、
 反対に京都駅に向かって歩くのは下る。東西の場合は御所を中心にしてど
 っちも入る。が、出るとは言わん」
「入るだけで出るがなかったら、出口に困る」
「そんな阿呆な。東西の通り、駅前が七條、その向こうが五條、六條はなしや」
「何でや」
「ない訳は、六の字には、ロクでなし、長男の甚六、亭主の宿六・・・感心し
 た字がないからや」
「そら、当てにならん」
「五條の向こうが四條。京都の街で好きなのは五條と四條の間」
「と言うと、祇園やいろいろの花柳地のある?」
「そうや。唄の文句にも、粋な爪弾き、差し向かいー、これが本当の四ジョ
 半や」
「そんな阿呆な」
「あの山々が有名な東山」
「なるほど、ふとん着て寝たる姿や東山。見てると、そんな風に見えて来る」
「剣戟の映画でお馴染みの文句は、東山三十六峯静かに眠る頃」
「何や、東山はだいぶ寝坊らしいな」
「あ、それで思い出した。そろそろ出掛けよう?」
「出掛けよう? もう堪忍してくれ。君にお足をすっかり使わされて、僕は一
 も早く宿へ帰って寝たいわ」
「さあ、だから見回したところは、東山の真似をして布団の中でゆっくりー京
 の夢や」
「そら、今日の夢や」
「でも、一文も使わずに京見物が出来たので、えらい儲けたやないか」
「阿呆らしい。お足のお陰で、これが本当のくたびれ儲けや!」


洒落を交えた読み物は、奈良や大阪、琵琶湖などあり、名所まんざい見物という一連の連載がある。洒落の使い方、楽しさが十分に解る、笑いの読み物である。(昭和二十四年 秋田實作より)